目標6:HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止
<HIV新規感染者は世界全体で減少傾向へ転じる>
HIV/エイズの予防プログラムの改善と治療サービスの普及により、新規HIV感染者数の割合は世界全体では減少傾向にあります。
33もの国で新規感染者が減少しており、内22の国はエイズ蔓延の影響を最も強く受けていたサハラ以南アフリカ地域です。これとは対照的に、コーカサス・中央アジア地域のHIV新規感染は昨年に継続して上昇傾向であり、注射器による薬物注射が主たる要因です。
新規にHIVに罹患する患者が減少する一方、2010年末時点で3400万人ものHIV感染者がおり、2001年と比べると17%も上昇しています。これは抗レトロウイルス薬※による近年の治療の著しい拡充に伴い、HIVによる死亡者が減少しているためです。エイズに起因する死亡者数は2000年代半ばの220万人をピークに減少傾向にあり、2010年は180万人となりました。
※「抗レトロウイルス薬」とは、「HIVウイルスの増殖を抑制し、エイズの発症を遅らせる薬。いわゆるエイズ治療薬」のこと。
(出典:UN The Millenium Development Goals Report 2012をもとにJANIC作成。また、文中の南アフリカとは、アンゴラ、ザンビア、マラウイを含めたそれ以南の計10カ国余りを指している。)
<HIV/エイズの治療は普及するも、目標は達成できず>
2010年までにおよそ6500万人の途上国に住む人が抗レトロウイルス薬による治療を受けています。
これまでで最も多くの人に治療が行き渡ったものの、2008年から2010年にかけては、130万人が新たに抗レトロウイルス薬による治療を受けました。しかし、2011年の国連HIV/エイズ・ハイレベル会合における、「2015年までに抗レトロウイルス治療を受けられる人口を1500万人まで増加させる」という合意※を達成するには、まだ1400万人程度の人に治療が行き渡っておらず、極めて不十分であるといわざるを得ません。
抗レトロウイルス薬の治療を受けられる人の割合は、途上国全体では48%にすぎません。地域別にみると、西アジアを除いて増加しているものの、2010年までに必要な人すべてに治療を行き渡らせるという目標は達成することができませんでした。また、治療薬の普及率は性別や年齢によって異なっています。2010年の普及率は女性が53%に対して男性は40%でした。また、途上国における子どもへの普及率はおとなよりも低くなっています。
※外務省 国連HIV/エイズ・ハイレベル会合成果文書(概要)より再掲
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kansen/un_hiv1106_1.html
(出典:UN The Millenium Development Goals Report 2012をもとにJANIC作成。)
<マラリア死者は減少しているが、目標達成には及ばず>
2010年のマラリアによる死亡者は推定65万5000人で、死亡率は2000年と比較すると25%減少しました。地域別ではアフリカが91%を占め、死者の86%は5歳未満の子どもです。
マラリアによる死亡率及び有病率は削減されていますが、2010年までに達成するとした国際合意目標である「マラリアによる死亡率及び有病率を50%減らす」には遠く及びませんでした。
一方、国際的なマラリア対策への拠出額は増加しており、殺虫剤を練り込んだ蚊帳が普及しています。こうした蚊帳に守られて就寝する子どもたちはサハラ以南アフリカ地域で、2000年には2%でしたが、2010年には39%にものぼっています。国際社会からの拠出額は、2011年が19億ドルと過去最高に達しましたが、すべての人がマラリアの予防とコントロールをするには、あと50~60億ドルもの資金が必要とされており、さらなる支援が求められています。
■MDGs目標6「HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止」のターゲット
ターゲット6-A
HIV/エイズのまん延を2015年までに阻止し、その後減少させる。
ターゲット6-B
2010年までにHIV/エイズの治療への普遍的アクセスを実現する。
ターゲット6-C
マラリアおよびその他の主要な疾病のまん延を2015年までに阻止し、その後減少させる。
■MDGsの8つの目標
(MDGsの8つの各目標のロゴは、(特活)ほっとけない世界のまずしさが作成したものです。)